GROOOVEの阪本です。
商業施設において、シャワー効果や噴水効果を狙った施策やテナント誘致を行うことはもはや常識となっています。
シネマコンプレックスや話題店を集めたフードコート、イベントスペース等の集客効果の高いポイントを作り、周辺のテナントへシャワーや噴水のようにお客さまの流れを作るこの施策は、大きな売り場面積を確保できる郊外のショッピングモールでよく導入されていますが、都市型の商業施設においても、小劇場やポップアップスペース、バーゲン会場等で、同様の効果を狙っている例もあります。
どのような施策を行う場合でも、その効果を計測することは重要です。しかしながら、シャワー効果の効果計測は難しく、その施策に効果があったかどうかは売上や施設入店数等の限られた数値で判断するしかありませんでした。
本稿では、難しかったシャワー効果の計測において、新しいアプローチで計測を可能にした「ReID」という新しいプロダクトを紹介しながら、商業施設におけるシャワー効果測定の重要性についてお伝えします。
シャワー効果を測る方法
シャワー効果を測るには、多地点の計測情報をひとまとめにし、特定の人物が、A→B、B→C、C→A等に移動したという「地点間移動データ」を把握出来ることが必要です。
シネマコンプレックスのシャワー効果を測るには?
例えば、シネマコンプレックスの入場者数が多いからと言って、シャワー効果が高いわけではありません。シネマコンプレックスに来場したお客さまが他のテナントへ立ち寄っているか? がシャワー効果の要であり、これが実現出来ていないのであればシャワー効果とは言えず、単に「集客力の高いテナントが入居している」という説明のみになってしまいます。
もちろん、シネマコンプレックスの来場者数と、各テナントの売上を比較することで、一定のシャワー効果の計測は可能です。しかし、この結果はもしかしたら外部からの来店促進施策が効いているだけかもしれませんし、シネマコンプレックスに関係の無い来店が「たまたま」多かっただけかもしれません。
隠れたシャワー効果ポイントを見つけられる?
また、多点間の移動データを取得することで、隠れたシャワー効果ポイントを発見することも出来ます。
例えば、実は他の店舗への誘導効果が高いテナントや、売上は高いが他のテナントへの誘引が極端に低い、等です。欧米ではこれらのデータを基に、誘引効果の高いテナントのテナント料を下げたり、他のテナントへの誘引が低いテナントのテナント料を上げたりする「ダイナミックプライシング」に活用している例もあります。
それだけではなく、折込チラシの一面に誘引効果の高いテナントを起用したり、シャワー効果が低いテナントについてはテナント位置をあえて施設の奥へ移設するなど、あらゆる施策の一助として利用が可能です。
どのようにシャワー効果を計測するか?
アンケートを取る
少々トラディショナルな方法ですが、来店者に対してのアンケートを行うことは、現在でもデータ計測手法として用いられています。定量的なデータはもちろん、調査員による具体的なヒアリングから定性的なデータを集めることが可能です。しかしながらサンプル数を集めるにはコストがかかるだけでなく、毎日定常的に実施することは不可能に近く、現実的ではありません。
Wi-FiやBLE Beaconによる計測
お客さまが持っているスマートデバイスのWi-FiやBluetoothの電波を受ける装置による計測手法は、数年前に動線計測の一つの方法として脚光を浴びました。スマートフォンへクーポンをプッシュできるなど、マーケティング施策と綿密に連動できる魅力がありますが、デバイスのOSのアップデートに伴い、個別識別が難しくなった為、異なるポイント間での動線分析がとても困難になっています。
新しい計測方法「AIカメラによる計測」
今回メインでご紹介したいのが、この「AIカメラによる計測」です。異なるAIカメラ間で個人の「特徴量ベクトル」を取得し、それをクラウドで同一人物判定することで、多点間の移動情報を計測できるものです。
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個人を特定し、館内での行動を可視化
Aさんという人物を複数の監視カメラで追い続け、どのような移動を行ったかをデータとして記録していく作業を、AIカメラとクラウドのシステムで自動で行います。もちろん、「ポイントBに立ち寄った人」という特定の個人に絞った行動情報を抜き出すことも可能ですし、「全体のうちA→Bに行く人が●%で、A→Cに行く人が●%」「シャワーポイントを一回も通過せずに退館するのは全体のうちの●%」のような、統計情報としての活用も可能です。
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測定したい場所にのみ設置
今までに私共が提供しているAIカメラでも、いわゆる「動線分析」は可能でしたが、それを実現する為には、動線分析を行いたい売り場すべてをカバー出来るように、天井にカメラをたくさん設置する必要がありました。また、構造的に多層階の場合は一筆書きに動線を分析することが不可能であり、大型の商業施設にて動線分析を実現することは不可能です。
ReIDでは、測定したいポイントを絞って設置することが可能です。例えば8階建ての建屋で、8階の催事のシャワー効果が7階、6階にどれくらい出ているかを計測したい場合、店舗の入り口、8階、7階、6階の合計4フロアに設置するだけで動線分析が可能になります。もちろん、あとから計測ポイントを増やしていくことも可能です。
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提供されるデータは「匿名加工情報」の為、個人情報保護にも配慮
AIカメラで取得した画像は、即座にエッジデバイス内で「特徴量ベクトル」に変換され、顔や服装が判別出来る画像は破棄されます。特徴量ベクトルに変換された情報はクラウドへ保存され、夜間のバッチ処理によって「特徴量ベクトル」を削除。任意の「個人ID」を割り振られ、その行動順にソートされ、当社が準備した専用のクラウドに格納されていきます。
そこから提供されるデータは、特徴量ベクトルを有していないことから、個人情報保護委員会が定めている「匿名加工情報」にあたります。よって、統計に用いる以外の用途においては適法に扱うことができます。
まとめ
大規模な動線分析には相応のコストがかかることが一般的でした。そうなると、大規模な動線分析はどうしても一部の法人への導入に限られてしまい、予算の限られたほとんどの企業での導入は断念せざるを得ません。
今回ご紹介したReIDは、そういったコストの壁を打破できる可能性を秘めた、素晴らしいプロダクトだと個人的には感じており、今までその壁が原因で躊躇していた小売業の皆さまに、少しでもご興味をお持ちいただければと思っております。
どんな小さなことでも結構ですので、ご質問等がございましたら、こちらのフォームからいつでもご連絡ください。
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