ケーススタディ

小売店の利益を上げる方法:売上向上と経費削減の2つの軸で解説

小売業界は、利益を生み出すために、経済の変動や消費者の購買傾向に対応し、常に新たな戦略を打ち出す必要があります。そして、企業の重要な取り組みの一つが店舗の収益性を管理することです。

売上が高くても経費がそれ以上にかかっていれば、利益は出ません。逆に、経費を削減しすぎて商品やサービスの品質が下がれば、客足が遠のき、売上が下がる可能性があります。

売上と経費のバランスが取れた店舗では、持続可能な収益を安定的に作り出すことができます。

本記事では、小売店舗が利益を最大化するための収益管理と、「経費削減」「売上向上」それぞれの軸で戦略を立て、利益を生み出す方法について詳述します。また、店舗計測ツールである「AIカメラ」のデータをもとに、店舗の運営を向上させ、利益を最大化する方法を探っていきます。

 

店舗の損益計算と利益向上のポイント

売上・経費・利益の関係性とは?

店舗経営において、売上、経費、利益の3つの要素は密接に関係しています。

売上は商品やサービスの売れ行きによりもたらされ、経費はそれらを供給するために発生する費用のことです。また、利益は売上から経費を引いたものになります。

売上の計算は、販売した商品やサービスの価格と、その販売量を掛け合わせることで求められます。

経費には、製品の原価、人件費、広告費、リースやローンの支払いなどが含まれます。売上額からこれらの経費を差し引くことで利益を計算します。

売上が経費を上回ると利益が生まれ(黒字)、下回ると損失(赤字)となります。

店舗の利益を最大化するには、売上を増やす一方で、経費を削減することが必要です。

ここで重要なのは、売上と経費の数字を詳細に把握し、どうすればより多くの利益を生み出せるかを分析し、次の戦略実行にいかすことです。

例えば、ある商品が高い利益を生み出している一方で、他の商品が損失を引き起こしている場合、その原因を特定し、適切な対策を講じる必要があります。

 

店舗ビジネスにおける、収益管理の重要性

企業は事業活動を介して製品やサービスなどを生み出し、その付加価値を市場に提供することで、利益を得る組織です。

店舗ビジネスを維持・拡大するには利益の創出が不可欠であり、そのためには事業の予算売上などを適切に管理しなくてはならず、その役目を担うのが収益管理です。

収益管理のメリットは、企業、事業、プロジェクト単位で予算や原価などをリアルタイムで管理することで、様々な事態に冷静に対処できる点です。

「原価の値上がりにより、販売商品1点あたりの利益率が下がる」「追加工程の発生や急な店舗改装などによって今月は予算オーバーになる」「スタッフ増員のため、人件費がかかっているが、費用対効果(ROI、投資収益率)は高く、売上高アップで今期末にはなんとか回収できそうだ」といった具合で、現状課題を明確にし、戦略に関する決定を下す際の判断材料とすることができます。

次章からは、店舗の利益を最大化するための方法を「経費削減」「売上向上」の2つに分け、それぞれを詳しく見ていきます。

 

店舗の経費を削減し、利益を向上させる方法

経費は大きく分けて、必要経費と無駄な経費に分類できます。

必要経費とは、ビジネスを運営するために必要不可欠な経費のことを指します。これには、従業員の給与、館や店舗の賃料、光熱費、商品の仕入れコストなどが含まれます。これらの経費は、ビジネスを続けるためには避けられないものであり、削減することが難しい場合が多いです。

一方で、無駄な経費とは、効果的な管理や改善策を通じて削減可能な経費のことを指します。例えば、発注不備による過剰在庫や、ターゲットに訴求できていない広告宣伝費、スタッフのスケジュール・シフト組みが不適切で人件費を無駄にしている場合などが、これにあたります。

無駄な経費を削減するための方法としては、飲食店や小売店では、「過剰在庫を防ぐために、オーダー用のタッチパネルやPOSレジと連携させた在庫管理システムを導入する」、またアパレルやコスメ・美容関連を取り扱う店鋪では、「宣伝広告の媒体をSNSメインにしたり、自社ターゲットとの相性が良いとされるレビュー・口コミサイトに広告を掲載することで、コストパフォーマンスを上げる」などです。

また、最近では、店頭にAIカメラを設置して、入店数にスタッフの稼働量をあわせて人件費を最適化したり、来店客の属性を取得して、自社ターゲットに訴求力のあるプロモーションやキャンペーンを判断することで、広告費やマーケティング費を節約する方法もあります。

 

 

店舗の売上を伸ばし、利益を向上させる方法

一方、売上アップによる利益の増加は、多くの要素が重なり合って達成します。

まず、顧客のニーズを理解することが不可欠です。顧客が何を求め、何に価値を見出すのかを理解することは、商品やサービスの改善に役立ちます。店舗運営においては、売り場で実際に店長やスタッフが顧客の購買行動を把握し、適切な商品配置を行うことも重要です。

次に、商品やサービスの適切な価格設定が重要です。価格は購買意欲に大きな影響を与えるため、常に適正価格を見つけることが求められます。

また、顧客満足度も重要な要素です。品質の高い商品と優れた接客サービスで、良好な顧客体験を提供することにより、自社の価値を上げることができます。購入後も顧客のフォローを行うことでリピーターを増やし、ロイヤルティを構築することも、売上増加に寄与します。

加えて、O2OOMOなどの顧客目線での販売チャネルの多様化も売上拡大に貢献します。店頭販売だけでなく、ネット通販などのオンライン販売を活用したり、店頭受け取りができるサービスを取り入れるなど、顧客が購入しやすい環境を整えるのがポイントです。

他にも様々な方法がありますが、上記のような方法を組み合わせることで、売上を伸ばすことができます。

 

AIカメラを用いて、売り場を最適化する

最近ではデジタルテクノロジーの進化により、AIによるデータを活用した新たな戦略が登場しています。

その中でも、精度の高いデータを安定的に取得できる店舗測定ツールとして、AIカメラが注目されています。

AIカメラでデータを取得するメリットは、「経費の削減」「売上の拡大」の2つの軸で利益アップを図ることができる点です。

主に、店頭での接客サービスを向上させたり、商品への興味関心度により商品選定や販促施策を最適化させたり、顧客の移動経路をもとにレイアウトを最適化することで、売上拡大を目指します。

また、入店数に合わせた適切なスタッフ配置や、属性に合わせた最適なマーケティングを実行することで、売上を向上させるだけでなく、人件費や販促費といった経費が削減できます。

ここからは、AIカメラを活用した具体的な戦略の実施方法について紹介します。

 

1. 1日の入店数予測からスタッフの配置を最適化する

AIカメラには、リアルタイムに人の動きを検出・追跡する技術を備えています。これを活用して入店数をカウントすることができます。

蓄積された客数データから1日のうちの来店客数のピーク時間を予測し、それに合わせてスタッフの人数を調整することで、接客による購買機会が創出され、利益増加が見込めます

また、勤務スケジュールを調整して、必要な時に必要な数のスタッフを稼働させれば、業務の効率化と人件費の節約になります。

 

2. 顧客行動をもとに最適な商品選定と陳列を実現する

AIカメラは、顧客の商品への興味関心度を分析することも可能です。

例えば、特定の商品棚の前でどれくらいの時間を過ごしているのか、どの商品に手を伸ばしているかなど、顧客の行動傾向を調べることで、在庫管理の最適化や商品の補充タイミングを判断しやすくなります。また、売上をもたらす商品やカテゴリの判別、顧客体験を向上させる商品陳列などに生かせます

また、もし特定の商品があまり手に取られない場合、その商品の位置を変えてみる、または店頭POPなどで誘導して、売上向上を図ることが可能です。さらに、人気の商品はすぐに手の届く場所に配置するなど、商品配置を工夫することもできます。

 

3. カスタマージャーニーを改善し、売上を伸ばす

AIカメラは店舗内の人の流れを動線で追跡し、売上に影響を与えるレイアウト課題を明らかにします

顧客の購入に至った移動経路や各エリアでの平均滞在時間を把握し、それらの情報をもとに店舗内装やディスプレイ(VMD)を見直すことでカスタマージャーニーが改善され、売上増加が期待できます。

 

4. ターゲティングの最適化で、利益率を上げる

AIカメラは、販促施策における費用対効果の向上にも寄与します。

具体的には、AIカメラの顧客の顔認識機能や特徴点を捉える機能を活用し、店舗を訪れる客の性別や年齢層などの顧客属性を取得します。

どの属性グループの来店が多いのか、どの商品がどのような年代に人気があり、どのような経路を辿って購入しているのかまで、解析することができます。

あらかじめ顧客をセグメンテーションし、ターゲティングを絞った上で商品選定や広告配信、店頭POP・サイネージの設置などを行うことができれば、マーケティングプロモーションにかかる費用を削減し、利益を上げることができます。

AIカメラを用いて属性ごとに動線を取得した結果(30代女性)

 

5. 店頭における集客施策で入店客を増加させる

小売店舗の売上は来店客数、購入率、平均客単価の3つのKPIで成り立っています。

来店客数を増やすためには、店舗の立地や外観に加え、看板などの入り口付近のディスプレイ施策で「見える化」することが重要です。

AIカメラを店舗の入り口付近に設置し、店前通行量と入店数から入店率を導き出すことで、集客効果を最大化するための施策の効果検証ができます。

 

6. 接客の改善で平均客単価・購入率を上げる

購入率を上げるためには、商品の魅力を最大限に引き出すことが求められます。
また客単価を上げるためには、顧客一人ひとりが購入する商品の数を増やしたり(クロスセル)、購入商品の価格を上げる(アップセル)ことが必要です。

これら2つの指標には、スタッフの接客パフォーマンスが大きな影響を与えます。具体的には、主にピーク時間のスタッフの有無、接客のタイミングや接客スキルなどです。

例えば、入店ピーク時間をあらかじめ割り出しておいて、その時間帯には必ず必要な数のスタッフを配置し、店内の特定の商品に興味を持つ顧客がいれば、その商品の価値を直接スタッフが説明し顧客に勧めることで、購入率を高めることができます。

また、店内での滞在時間が長い顧客は一般的に客単価が上がりやすいと言われています。顧客が求めていると思われる商品をスタッフが提案することで、客単価を上げることができます。

AIカメラはスタッフが各場所(倉庫・レジ・売り場など)にいる時間や人数、接客の回数や時間に加え、接客後に購入に至った客数や割合なども算出できます。このデータを活用して、スタッフにフィードバックやトレーニングを行うことで、接客サービスの向上に役立てることができます。

 

AIカメラで見る店舗運営の“点”と“分岐”とは?

AIカメラは、単に売り場を観察しデータを取得するだけでなく、店舗運営の“点”と“分岐”を明確にするためのヒントを与えます。

“点”とは、入店人数の推移、売り場での顧客の行動、スタッフのパフォーマンス、顧客属性、商品や販促物への反応などの、具体的な数値を指します。AIカメラは、これらの情報を収集し、それぞれの“点”が売上や経費にどのように影響を与えているかを分析します。

“分岐”とは、これらの“点”から得られた情報を基に、どのようなアクションを取るべきかを示す指針です。例えば、ある商品が売れていない場合、その商品の位置を変える、顧客の移動パターンに合わせて店舗内装を変える、商品の価格を下げる、宣伝を強化する、接客に取り入れるなど、複数の対策が考えられます。

これらの中から最も効果的な対策を選び、実行することで、利益の向上を実現させることができます。

 

まとめ

本稿では、小売店舗の利益を最大化するための損益計算や利益向上のポイント、売上向上とコスト削減によって利益を生み出す方法や、AIカメラのデータを活用して利益を最大化する戦略について、解説しました。

店舗の利益・損益は、様々な要素が複雑に絡み合って形成されます。

AIカメラを活用することで、従来の手法では見えにくかった店舗運営の“点”と“分岐”を明らかにし、経費削減および売上増加につなげることができます。

本情報が、貴社の店舗ビジネスの成功に寄与することを願っています。


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