ケーススタディ

【RetailNext共同記事】今日の小売業界におけるデータ収益化とは?

本記事は、米国RetailNext社と共同で執筆した記事です。株式会社GRoooVEは、日本を代表するRetailNextのソリューションパートナーです。RetailNextのインストール実績数は日本国内800店舗以上、海外5店舗以上となり、RetailNextのトップパートナーとして、現在も導入数は増え続けています。


データドリブンな時代において、リアル店舗を持つ小売業者は、店舗経営における未知の可能性を模索しています。

本記事では、小売業におけるデータ収集とプライバシー規制、リテールメディアネットワーク(RMN)の役割や、データマネタイゼーション(データによる収益化)の方法について、解説します。

変化の激しい小売業とテクノロジーの進化において、小売業者はデータをどのように活用し、ビジネスを成長させ、将来に備えることができるのでしょうか?

リアル店舗に実用的なインサイトとソリューションをもたらすデータとは、どのようなものでしょうか?

リアル店舗の顧客データ収集に有効な店舗計測ツールAIセンサー Aurora(オーロラ)」や、当社が実際にAuroraを設置し、データ取得環境を構築した小売店の事例もあわせてご紹介します。

 

データ収益化の概要

データ収益化とは、店舗で収集された膨大なデータから収益を生み出すプロセスのことです。

このプロセスには、利益につながるインサイトを得るための顧客の購買、入店傾向、商品の在庫状況、属性情報などのデータ分析作業も含まれます。そして、データを収益につなげるための具体的な活動例には、データから得られた洞察を元にマーケティングキャンペーンを最適化する、顧客体験をパーソナライズする、自店舗の運営効率を向上させる、データをサードパーティへ提供する、さらには、消費者の行動パターンに基づき新たな収益源を発見することなどが挙げられます。

 

リテールメディアネットワーク(RMN)の基本とベストプラクティス

実店舗などのオフラインでの購入に比べ、オンラインでの購入比率が高まっている今、リアル店舗においても、単に「モノを売る」だけでなく、顧客一人ひとりをよりよく理解し、顧客体験を最適化して売上を上げることが大切になってきています。

ここでは、小売業界が顧客データをもとに収益化するための実用的なモデルのひとつ、「リテールメディアネットワーク(RMN)」についてご説明します。

リテールメディアネットワーク(RMN)とは?

リテールメディアネットワークとは、「ウェブサイトやアプリなどのデジタルチャネルの集合体からなる広告インフラ」と定義されており、小売業者が自社で収集した顧客データを利用して広告を最適化させたり、自社の広告枠を販売元(ブランドやメーカーなど)に提供するものです。

具体例として、コンビニ、スーパー、家電量販店、ドラッグストアなどが自社ECサイトの広告枠を各社に販売することが挙げられます。広告主となったブランドやメーカーは、小売店が提供する消費者の購買行動データに基づき、より効果的な広告を配信することができ、小売店もブランドやメーカーと効果的な共同販促を行い、広告収入を得ることができます。

また、リテールメディアはオフライン店舗に設置される媒体にも存在します。代表例は、店舗や商業施設、ブースなどにあるデジタルサイネージです。店舗計測ツールAIセンサー)などで顧客の属性や行動データを取得し、得られた情報をもとにターゲット顧客に最適化された広告配信をすることで、商品の認知拡大や購買促進につなげることができます。

リテールメディアネットワークの強みの一つは、クローズドループ測定と、小売店舗がすでに収集した広告費用対効果(ROAS)の高い優良な顧客データに基づいて、各ブランドやメーカーが自社のターゲットに合わせ、関連性の高い広告を配信し、消費者ニーズに対応した施策の展開や顧客体験の向上を図ることができる点です。

もう一つの強みは、個人データ保護を目的としたサードパーティークッキー規制の最近の動向も踏まえ、欧州のGDPR(一般データ保護規則)や米国のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などの法規制に準拠する小売業(ファーストパーティ)が保有する一次顧客情報を活用できるため、今後の様々な法規制の強化によるデータ利用制限に対する不安を取り除きながらも、顧客が承認したデータを効果的に収集することができる点です。
(*規制については、後半の「データ収集に伴うプライバシー規定」で詳しく説明しています。)

現在、ブランドやメーカーが広告投資を拡大する傾向は強まっています。

従来店頭販売のみに頼ってきた小売業界にとって、「自社の広告スペースを販売したり、顧客データを提供することは、新たな収益源になる」として、リテールメディアへの期待をますます高めています。

NRFによると、今はまさに小売メディアの「黄金時代」にあるとも言われています。

実際、「eMarketer」(March 2023)の調査によると、リテールメディア分野における市場規模は、アメリカ国内で2019年の130億ドルから450億ドルに成長しました。

リテールメディアの広告投資はさらに拡大し、2027年までに広告収益は約1000億ドルに到達することが見込まれています。

リテールメディアの広告投資額推計・予測(米国2023年 − 2027年)

出典:https://www.emarketer.com/content/retail-media-ad-spend-will-more-than-double-by-2027

日本国内におけるリテールメディア広告の市場規模についても見てみましょう。

株式会社CARTA HOLDINGSと株式会社デジタルインファクトが共同実施した2023年の調査によると、日本のリテールメディア広告市場は2023年に3,625億円に成長し、2027年には2.6倍の9,332億円に拡大すると予測されています。

興味深いことに、Eコマース事業者の市場シェアは2023年の約94%から2027年までに約85%まで低下すると予測される一方、小売事業者の市場シェアは2023年の約6%から2027年までには約15%となり、2〜3倍まで拡大すると予測されています。

リテールメディア広告市場規模推計・予測 2021年 – 2027年(EC事業者・店舗事業者別)

リテールメディア広告市場規模推計・予測 2021年 – 2027年(デジタルサイネージ・デジタル広告別)

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000109717.html

参考資料:

  1. リテールメディアとは?事例、メリット、実現方法を解説|TOPPANホールディングス株式会社
  2. リテールメディアとは?メリットや事例、市場規模、ECへの活用法を徹底解説!|goo Search Solution(NTT docomo)
  3. リテールメディア広告市場調査を実施|株式会社シード・プランニング|PR TIMES

 

ベストプラクティスの確立

2024年2月、IAB/MRC Retail Media Measurement Guidelines(リテールメディア測定ガイドライン)が発表されました。このガイドラインでは、一般的なリテールメディアネットワーク測定の原則を定義しています。

  1. Transparency and consistency:透明性と一貫性
  2. Accuracy and reliability:正確性と信頼性
  3. Privacy, security, and compliance:プライバシー、セキュリティ、コンプライアンス

この包括的なベストプラクティスのガイドラインは、データの一貫性を確保し、ネットワークにおける広告主や小売業者の適切な広告運用、データセキュリティの安全性の保証、顧客体験を最大化することなどを目的としています。

リテールメディアネットワークにおける「顧客データの計測における課題」は引き続き重要な事項であり、本記事の後半では、これを解決するための店舗計測ツールや、持続可能でスケーラブルな収益化を実現するためのツールやシステムの特性をご紹介します。

補足資料1:

以下の動画では、アメリカ企業「Coresight Research Inc.」のCEO兼創設者、Deborah Weinswig(デボラ・ワインズウィッグ)が、持続可能なデータ収益化についての考えを語っています。

出典:Deborah Weinswig on Sustainable Data Monetization|RetailNext

 

リテールメディアネットワーク(RMN)における店舗データの役割

この章では、オフライン店舗計測ツールの1つ、「AIセンサー」で取得する顧客データの役割について説明します。

AIセンサーを使用する小売企業は、店舗の正確な入店データ店前通行量POSデータやスタッフのシフトなどと連携して得られるデータを使用して、オンラインの広告インプレッションやCPM(Cost Per Mille:広告を1,000回表示させるのにかかる費用)に代わる「入店率」「購買率」「平均客単価」などの計測ができます。

また、店内分析では、顧客の行動パターン移動パターンを取得し、どのような組み合わせのマーケティング・販売戦略がコンバージョン(購買)の動機付けになったかを測定することもできます。また、データから得た洞察は、店舗レイアウト、ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)などに応用することができます。

さらに、デジタルサイネージなどの店内販促物への顧客の反応も調べることができ、これに応じて、コンテンツをどのように修正すべきかがわかるため、従来、店頭で販促物を掲示する際に費やしていた憶測にかける時間や金銭的なコストを削減できます。

このように、AIセンサーで取得するデータを活用することで、小売企業は“ファクトベース”での収益化モデルを構築することができるのです。

ここで忘れてはいけないのは、小売業者は顧客データに関するプライバシー規制を順守しなければならないということです。消費者は益々、自身のデータを企業がより適切に管理し、説明責任を果たすことを求めるようになってきています。

補足資料2:

When we’re able to collect data from in-store shopping and then share that or sell that to a brand, you’re not only empowering that brand to bring more relevancy to product, to details of products…but also really understanding the customer.
– Shelley E. Kohan

店内における顧客行動・購買データを収集し、それをブランドと共有したり販売したりすることができれば、ブランドは適切な商品を提供できるようになるだけでなく、顧客を本当に理解することが可能になる
– シェリー・E・コーハン

参照:Shelley E. Kohan on Data Monetization & Retail Networks|RetailNext

 

データ収集に伴うプライバシー規定

データは今や貴重な資産であり、各業界は、データ主導のイノベーションとデータ保護規制へのコンプライアンスの間で岐路に立たされています。

2018年、「GDPR」(一般データ保護規則)はEUとその周辺国に住む消費者に向けてデータ保護とプライバシーに関する権利を発表しました。また、同年米国では「California Consumer Privacy Act of 2018(CCPA)」(カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行され、消費者は企業が収集する自身の個人情報をより厳しくコントロールできるようになりました。

プライバシー保護規制の強化に伴い、小売業界も、顧客データを収集し収益化する際には、収集するデータが匿名化され、コンプライアンスに準拠し、プライバシーに配慮したものであることを保証する技術を備えたシステムの導入をしなければなりません。

補足資料3:データ取得ツールとそれを可視化するシステムの品質をチェックしましょう

正確で実用的なインサイトを得るためには、質の高いデータを取得し、わかりやすく可視化する必要があります。導入する予定の入店計測システムや、それを可視化するダッシュボードなどのBIツールが十分に要件を満たし、信頼できるものであることを確認しましょう。

データ品質が良好であるための3つのポイント:
  1. 検証可能:データを効果的に分析できるか? データへのアクセスは、遠隔で可能か?
  2. 適時性:パフォーマンス指標にリアルタイムにアクセスできるか?
  3. 自動化:レポート作成の自動化、レポート配信のスケジュール設定、見たいデータの絞り込みなどのカスタマイズは可能か?

 

世界における店舗計測のスタンダード、RetailNext(リテールネクスト)

RetailNext(リテールネクスト)とは?

RetailNextは、eコマース型の顧客分析を実店舗、ブランド、モールにもたらしたデータ分析プラットフォームです。

RetailNextのプラットフォームは、店舗内の顧客行動データを自動的に収集・分析し、リアルタイムのインサイトを提供することで、実店舗での顧客体験を向上させます。

世界90カ国以上、400を超えるブランドがRetailNextのソリューションと小売ビジネスに関するノウハウを採用し、店舗売上の増加、不要な経費の削減などを実現しています。

*RetailNextは、カリフォルニア州キャンベルに本社を置いています。

 

推奨リソース

さらに詳しい関連記事については、RetailNextオフィシャルサイト(英語)のブログ記事、eBookなどを参照してください。さらに、RetailNextのYouTubeチャンネルでは、小売業界におけるデータ収益化などにおける、専門家の独占インタビューを無料でご覧いただけます。

 

GROOOVEがRetailNext AIセンサー「Aurora(オーロラ)」の導入を手がけた店舗の事例

最後に、GROOOVEが実際にRetailNextのAIセンサー「Aurora(オーロラ)」の導入を手がけた小売チェーン店の事例をご紹介します。

 

AIセンサー Aurora(オーロラ)導入の背景

某国内小売チェーン店において、店舗の運営状況や施策実施前後の数値を店舗と本社でリアルタイムに共有できる環境を構築しました。

RetailNext導入に至った背景として、同店舗では、店舗における即時性のあるデータをもとに、戦略的な意思決定を容易かつ機動的に行う必要性を感じていました。しかし、そのベースとなる包括的なデータを取得する環境が整っていなかったことが挙げられます。

 

AIセンサー Aurora(オーロラ)設置後の取り組み

  1. GROOOVE側
    全店舗にAIセンサーを設置し、AIセンサーで取得した客数データを、POSレジデータ/勤怠データなどの複数のデータと掛け合わせ、常時取得できる仕組みを構築。さらに、店内全域にもAIセンサーを設置し、客とスタッフの動線を取得することで、顧客・スタッフそれぞれの行動を分析できる環境を構築。
  2. クライアント側
    繁忙時間帯は接客スタッフを増員し、閑散時間帯は棚卸しなどの業務に充てる。接客の効果検証など、売上につなげるための施策の立案・実行を繰り返す。

 

AIセンサー Aurora(オーロラ)導入の結果

AIセンサー Auroraの導入により過去・現在の入店状況や未来の客数予測が可能になり、スタッフ配置の最適化につながり、店内業務を効率的に行うことができるようになりました。

さらに、自店の業績をリアルタイムで確認したり、顧客にパーソナライズされた施策や顧客体験を最適化するための施策の検証結果などを本社と共有しやすくなり、スタッフ一人ひとりのモチベーションが高まりました。

 

RetailNextのソリューションパートナー、GROOOVE

AIセンサーを導入し、顧客データを有効活用するためには、まずは導入目的を明確にし、自社のニーズに合わせて予算計画を行い、その後、具体的な改善施策に落とし込んでいく必要があります。

さらに、AIセンサーの費用対効果を最大限にするためには、システムの構築やデータ分析に精通した技術者やマーケターを確保し、継続的にデータを運用していく必要があります。

RetailNext AIセンサー Aurora 導入実績 国内No.1」のGROOOVEは、ネットビジネス全盛の現代において、オフライン店舗の人の動きをデジタル化し、簡単・迅速にデータ活用できる環境を構築しています。また、AIセンサー導入後のデータ分析・運用をサポートするコンサルティングも行っています。

  1. RetailNextのオフィシャルサイト(日本語版)はこちら
  2. 国内におけるRetailNext AIセンサー Aurora 導入のご相談・ご依頼はこちら
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