国内外に多くのファンを持つ中古品販売チェーン、ブックオフ(BOOKOFF)およびハードオフ(HARD OFF)ですが、先日、複数の店舗で「架空取引」や「内引き」など、従業員や店長の不正行為が発覚したというニュースが報じられました。
現在も専門家による調査が進められていますが、企業内部の不正行為は、顧客の信頼を裏切ることにもなりかねません。
本記事では、ブックオフやハードオフの不正発覚事件を受け、事件の背景や要因を探り、今後企業がどのような再発防止策を講じるべきかを考察していきます。
またその一環として、AIカメラの導入で実現できる「店舗の資産保護の可能性」についても触れます。
店舗従業員や店長による不正行為を検知・追跡するために、AIカメラをどのように活用できるのか、小売業を中心に様々な店舗データを提供しているアメリカベンチャー企業「RetailNext(リテールネクスト)」のサービスとともにご紹介します。
この記事を通じて、小売企業がどのように資産を守り、不正行為の蔓延を未然に防ぐことで、企業への信頼の維持に努めることができるのか、参考にしていただければ幸いです。
ブックオフ(BOOKOFF)・ハードオフ(HARD OFF)の従業員による不正事件が発覚
2024年6月25日、古本や中古家電などの買取・販売店「ブックオフ(BOOKOFF)」チェーンを展開するブックオフグループホールディングスは、子会社が運営する複数の店舗において、従業員が架空取引や内引きを行い、不正に現金を入手していた疑いが発覚したと発表しました。
ブックオフは調査のため、6月27日から7月1日にかけて、全国の店舗を臨時休業し、緊急の棚卸しを実施しました。その結果、フランチャイズを除く全国の直営店400店舗以上が休業または営業時間の短縮を余儀なくされました。
現在も弁護士を含む外部有識者で構成される調査委員会を設置し、事実関係の調査や再発防止策の検討を進めています。調査の結果、7月16日に予定していた2024年5月期の決算発表は、延期となりました。
一方、同じく中古品を扱うハードオフ(HARD OFF)も調査報告書を公表し、店長による架空買い取りが行われていたことが明らかになりました。
参考:ブックオフ疑惑調査で臨時休業 ハードオフも架空買い取りか 同時に発覚も関連なし?|グッド!モーニング
ここからは、今回の事件で明るみになった2つのキーワード「架空取引」「内引き」について詳しく見ていきます。
「架空取引」とは?
架空取引とは、実際には取引が行われていないにもかかわらず、あたかも取引が行われたかのように見せかける処理のことです。
例えば、存在しない取引の架空計上(架空買取、架空仕入れ)、売上金額の水増し(過大計上)、架空契約、不要な循環取引などが挙げられます。
これらは、資金管理、決済代金の支払いや流用、粉飾などを目的として行われる不正取引であることが多いです。
参考:
「内引き」とは?
内引きとは、店長や従業員、スタッフなど、内通者による万引きのことです。そのため「内引き」と略されています。
具体的には、店舗の在庫品を無断で持ち出し、私的に利用したり転売したりする目的で、店舗の資産の一部を横領(窃盗)する行為を指します。実は、コンビニエンスストアで廃棄予定の消費期限切れ食品を店員が持ち帰る行為も、「内引き」であり、内部不正行為に当たります。
内引き調査が厄介な点は、客による窃盗事件である万引きとは異なり、店舗の状況や防犯カメラの位置などを熟知している者による犯行であるため、外部からの発見がされにくいことです。その結果、犯行の原因究明調査が複雑化し、捜査が長期に及ぶ可能性があります。
特に、店員の入れ替わりが激しいコンビニエンスストアやドラッグストアにおける、店長(責任者)が不在の深夜の時間帯のアルバイトスタッフによる犯罪が多いことが指摘されています。
万引きと同様、内引きは在庫ロスの主な原因の一つであり、実際、日本の小売業における在庫ロスの約20%は、内引きによるものと考えられています。
ブックオフ従業員による「架空取引」と「内引き」の実態
ブックオフでは、実際には客が来店していないにもかかわらず、従業員が過去の取引情報をもとに、あたかも客から書籍を買い取ったように偽装し、買い取り代金を着服する「架空取引」や、買い取った商品を勝手に持ち帰る「内引き」が行われていたといたと推測されています。このほか、無料で引き取った商品を買い取ったと偽り報告したり、書籍の仕入れ値を実際よりも高く水増しして帳簿に記載し、現金を着服する手口もあったのではと考えられています。
参考:ブックオフ、杜撰な在庫・会計管理は解決が困難、元店員が告白…組織的不正か|Business Journal
ブックオフ従業員による不正の発生要因は何か
この事件を受け、流通の専門家は、「古物業界では以前からこうした不正経理はあったが、近年はPOSシステムの導入などで帳簿の電子化が進み、減少していると思われていた。しかし、架空取引が横行していた事実は、ブックオフのシステムに致命的な問題があることを示している。」と述べています。
盗品や不正品の流通を防ぐため、古物商には「取引相手の確認義務」「不正品報告義務」「帳簿等記録義務」という3大防犯義務があります。例外もありますが、基本的には相手方の身元確認、古物台帳への取引内容の記録、不正品の警察への届け出が義務付けられています。
上記に則り、取引があれば詳細なデータを残すはずですが、ブックオフでは「在庫情報を一元管理していない(データベース化していない)」と公式サイトで公表していることから、実際の在庫管理や会計管理はずさんだった可能性が高いと思われます。
そのため、膨大な取引のすべてを裏付け・確認することは事実上不可能で、過去に入手した個人情報をもとに、あたかも本当に取引があったかのように装うことも可能ではあるため、現金横領の有無の事実確認をすることは、実際困難なようです。
ちなみに、ブックオフでは、書籍、CD、DVD、ゲームなどの在庫情報はデータベースに蓄積されていたようですが、ある社員によれば、(D品などで状態の良くないものは特に)実際には顧客から買い取ったものでなくても(金銭の授受がなくても)、「買い取った書籍をすぐに廃棄処分した」と申告し、損失を計上することはよくあることだとのこと。
今回の調査にあたり、前述の専門家は、組織ぐるみの不正の可能性も指摘しています。
取引や出金を記録する過程には、複数の担当者や一定の権限を持つ管理者が関与している可能性が高く、不正取引が複数の支店で行われていたことから、多くのスタッフ間で情報が共有されていた可能性があるとの見解を示しました。
参考:ブックオフ、杜撰な在庫・会計管理は解決が困難、元店員が告白…組織的不正か|Business Journal
調査から見えてくる、ブックオフ・ハードオフに必要な今後の対策とは?
ブックオフの従業員不正の発生要因は多岐にわたりますが、主な要因として以下の3点が挙げられます。
第一に、大量の商品を扱う業務の複雑さと管理体制の不備です。
ブックオフでは、多種多様な商品が大量に取り扱われており、その在庫管理は非常に煩雑になり得ます。特に、中古品の取り扱いは、新品と比べて価格の設定が難しく、個々の商品の状態や鮮度に応じて価格を設定する必要があります。このような状況下で、管理体制が不十分であれば、不正を行う余地が生まれやすくなります。
第二に、従業員のモラルと教育の問題です。
従業員が不正を行う背景には、会社の倫理観の欠如や、従業員教育の不足が挙げられます。適切な倫理教育が行われていなかった場合、従業員が不正行為を軽視し、個人的な利益を優先する傾向が強くなります。また、業務に対するストレスや不満が蓄積されると、それが不正行為の動機となることもあります。
第三に、内部監査の不足です。
不正を防止するためには、定期的な内部監査が不可欠です。しかし、ブックオフのように多くの店舗を展開している企業では、全店舗を網羅的に監査することは難しく、不正が見過ごされるリスクが高まります。また、監査体制が形骸化している場合、不正行為が発覚する可能性も低くなります。
以上の要因が重なり合うことで、従業員による帳簿不正は発生しやすくなると考えられます。これらの要因に対処するためには、管理体制の強化、従業員教育の徹底、そして内部監査の充実が求められます。
この中でも特に重要視したいのが、3つ目の内部監査です。
業務が複雑化しやすく管理が難しい多店舗展開する大企業にとって、近年特に話題になっているAIやビッグデータを活用した高度な監査システムの導入は、不正防止に有効なソリューションになると考えられています。
※これらの予測は筆者独自の見解に基づくものであり、様々な要因によって変化する可能性があります。
AIカメラを活用して従業員の不正を防ぎ、店舗の資産を保護する
ここからは、AIやビッグデータを活用した高度な監査システムの1つである、AIカメラを用いた店舗の資産保護について見ていきます。
店舗の資産保護とは、商品や現金などの資産を不正行為から守るための対策を指します。
特に、ブックオフやハードオフのようなリサイクルショップでは、買取商品や売上金が頻繁に取引されるため、不正行為のリスクが高まります。そこで重要な役割を果たすのが、AIカメラです。
AIカメラの役割とは?
AIカメラとは、人工知能を搭載したカメラで、優れた映像解析技術により店舗内のスタッフの異常行動や不正行為を検知し、監視することが可能です。また、AIカメラは人間の目では見逃しがちなパターンを学習し、時間が経つにつれてその精度を向上させることができます。
従来の監視カメラ・防犯カメラとは異なり、AI技術を駆使して異常行動や不正行為の検知ができるため、事件を未然に防いだり、盗難被害を最小限に抑えることができます。
RetailNextのAIカメラ:アセットプロテクション(資産保護)機能とは?
レジ精算処理におけるエラーの原因には、決済端末機器の故障・不具合、スタッフの誤操作、スタッフによる不正の疑いなどが原因として考えられます。
様々なリアル店舗データを企業に提供しているアメリカベンチャー、RetailNext(リテールネクスト)のサービスの1つに、「アセットプロテクション(資産保護)」と呼ばれるセキュリティ対策機能があります。
RetailNextのAIカメラと既存のPOSレジデータを組み合わせることで、レジの取引異常を検知し、従業員による現金の不正引き出しなどを防ぐことができます。
RetailNextのダッシュボードで店舗スタッフの不正取引や異常を追跡する
AIカメラのデータとPOSデータを連携させ、RetailNextのダッシュボードに表示させることで、POS取引(入出金)、伝票、商品販売取引による返金・返品などのオペレーションなどの記録や、それらが記録された時刻に撮影されたカメラ映像を一画面で閲覧できます。
総合的なリスク判定としては、不審な取引件数や異常値件数からリスクの高低が複合的に判定され、結果は、「高リスク店舗」「高リスクレジ担当者」としてグラフで一覧表示されます。(*1)
- 実行後の取消し:レジ会計処理にて既に完了した取引が取り消された場合に記録されます。
- 現金払戻し: 顧客が商品を購入した後、店舗スタッフが購入代金の全額または一部を現金で払い戻した場合に記録されます。
- 品目の取り消し:レジ会計処理において、一部の商品の支払いが取り消された場合に記録されます。
上記の3項目(*2)により、例えば、顧客から商品を買い取った後に操作の実行が取り消された場合、商品を買い取った後に品目取り消し操作が行われた場合、顧客が商品を購入した後やカメラ映像に顧客が映っていないにもかかわらず現金払い戻し操作が記録された場合などにおいて、その操作を行った従業員を特定し、映像とともに原因を追跡することができます。
このように、RetailNextのサービスを利用することで、従来の防犯カメラでは見逃してしまうような微細な不正行為を捕捉することができます。
*1…取引量に応じたリスク発生率を抽出するため、規模の異なる複数の店舗間での比較が可能です。 *2…3項目は発生件数だけでなく、前期との比較が可能です。各期間の合計値(金額)や平均値(金額)を算出することもできます。
AIカメラへの期待:再発防止策になるか? ブックオフ従業員の不正を受けて
昨今の従業員による不祥事の発覚を受け、再発防止策としてAIカメラの導入を検討する小売企業も出てきました。
AIカメラは単なる監視ツールに留まらず、データに基づく分析機能を備えています。これにより、店舗内のリスクが高まる時間帯や特定の従業員の行動パターンを把握し、事件を未然に予防するための対策を講じたり、問題の早期発見や迅速な対応を促したりすることができます。
AIカメラの導入は、従業員の不正行為を減少させるだけでなく、他の従業員や顧客にとっても安心感を与えます。一部の従業員によって企業全体の信頼が揺らぐことを防ぎ、健全な職場環境を維持するための手段となります。また、従業員教育の一環としても利用でき、AIカメラの存在が不正行為を抑止する心理的効果を生み出します。
AIカメラの導入には初期投資や運用コストがかかるものの、長期的には、不正による損失を大幅に軽減し、店舗運営の透明性を高めることで、ブランドイメージを向上させる期待が持てるでしょう。
まとめ
本レポートでは、AIカメラとPOSレジのデータを連携させることで実現できる、店舗スタッフの不正抑止・防犯ソリューションをご紹介しました。
RetailNextのAIカメラを活用することで、店長やスタッフ、従業員の不審な動きを自動的・効果的に検出し、追跡捜査することができます。過去のデータに基づき、特定の店舗、日時、担当者における不正行為の発生傾向を解析し、予防対策を講じることも可能です。
今回のブックオフ・ハードオフの不祥事を受け、AIカメラは、企業がこのような事件の再発を防止する上で、今後ますます重要な役割を果たすかもしれません。
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GROOOVEは、RetailNext導入実績国内No.1を誇るトップパートナー企業として、入店カウントデータや人流取得の設計・構築だけでなく、防犯カメラとAIカメラのデータを連携させたソリューションのご提案など、様々なセキュリティプロジェクトにも携わっています。用途に応じて、貴社の既存の防犯カメラを活用したデータ提供(*)も可能です。
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