ケーススタディ

【RetailNext共同記事】美容小売業、消費低迷にもかかわらず底堅さを維持

本記事は、米国RetailNext社と共同で執筆した記事です。株式会社GRoooVEは、日本を代表するRetailNextのソリューションパートナーです。RetailNextのインストール実績数は日本国内800店舗以上、海外5店舗以上となり、RetailNextのトップパートナーとして、現在も導入数は増え続けています。


ビューティ・カテゴリー(スキンケア、フレグランス、メイクアップ、ヘアケア)は、インフレ、生活費の上昇、経済の不確実性にもかかわらず、成長を続けています。家庭用品、宝飾品(ジュエリー)、シューズなど、他カテゴリーは景気後退時に消費者支出が変動する様子が見受けられるものの、美容小売業は驚くほど回復力があることが明らかになっています。

実際、マッキンゼー(McKinsey)の調査「The beauty market in 2023: A special State of Fashion report」によると、世界の美容市場における小売業の売上高は、2027年までに約5800億ドルに達し、年率6%の成長が見込まれています(下の画像参照)。さらに、今後の美容トレンドの特徴は全体的に「プレミアム化」となることが予想されており、特にフレグランス(香水)とメイクアップ(化粧)品関連商品において、消費者が支出を増やし、2022年から2027年の間に「プレミアム美容部門」は年成長率8%(マスビューティ部門では5%)で成長すると予測されています。このように、財政難が世界中で蔓延する中でも、美容ブランドはセルフケアとしてのブランドを再構築しています。

  1. 世界の美容市場小売売上とその予測(カテゴリー別)*単位:10億USドル

出典:https://www.mckinsey.com/industries/retail/our-insights/the-beauty-market-in-2023-a-special-state-of-fashion-report

本稿では、消費低迷下においても底堅く推移している「美容小売業界」について考察していきます。

 

激動の時代におけるセルフケアの魅力とは?

美容業界の回復力の根底にあるのは、人間の根源的な欲求、すなわちセルフケアと個人の健康への欲求です。セルフケアは、経済的な不安や日々のストレスの中で心身のバランスを保つための習慣として認識され、解放と癒しを与え、自信を向上させます。

また、顧客は美容を通じて自己表現を求めています。スキンケアからメイクアップに至るまで、こうした習慣はセルフケアの一形態として機能し、現代社会で個人が自らを育み、幸福をもたらすことを可能にしています。

 

セルフケアの重要性を際立たせたコロナの大流行

コロナパンデミックは、セルフケアの重要性をさらに浮き彫りにしました。ロックダウンやソーシャルディスタンスの措置が講じられる中、人々は自己への癒しと平常心を保つためにスキンケアや美容の習慣に目を向けるようになりました。

 

ソーシャルメディアとデジタル・プラットフォームの台頭

ソーシャルメディアやデジタル・プラットフォームの台頭は、美容を民主化し、個人が様々な製品や流行を探求し、試すことを可能にしました。

インフルエンサーや美容ブロガーは、個人的な体験談やお勧めの製品をSNSなどで共有し、美容愛好家同士のコミュニティや仲間意識を育んできました。

その結果、美容業界はより包括的でアクセスしやすくなり、多様な嗜好やアイデンティティに適応するようになりました。

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革新と適応の力

美容小売業が回復力を高めているもう一つの重要な要因は、この業界が常に革新と適応力に焦点を当てていることです。美容ブランドは、消費者のニーズや嗜好の変化に応じて、新製品、処方、技術を継続的に投入し、消費者の関心を引きつけ、持続させています。

例えば、クリーン・ビューティーと持続可能性(サステナビリティ)の台頭は、多くのブランドに製品の改良と環境に優しい慣行の採用を促しました。特にミレニアル世代やZ世代などの消費者が、肌につける成分や美容製品の選択が環境に与える影響についてますます意識するようになっています。その結果、透明性と持続可能性を優先するブランドが市場で人気を集めるようになりました。

さらに、拡張現実(AR)人工知能(AI)などの技術的進歩が、美容小売業を再構築しています。

Sephora(セフォラ)のVirtual Artist(バーチャルアーティスト)のような化粧品のバーチャルお試しアプリによって、消費者は購入前に様々なメイクアップのイメージや色合いを試すことができるようになり、オンラインショッピング体験が向上しています。

同様に、AIアルゴリズムに基づくパーソナライズされた美容のレコメンド機能により、ブランドが個々の消費者に合わせたソリューションを提供できるようになり、ロイヤルティと顧客満足度を高めています。

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手頃な価格による美容小売業の経済的回復

インフレやコスト上昇にもかかわらず、美容小売業は、本来の手頃感や入手しやすいと言った理由で堅調に回復力を見せています。

贅沢品や可処分所得のカテゴリーとは異なり、ほとんどの美容製品は、日々の身だしなみや衛生習慣に欠かせない必須アイテムとして認識されることが多いです。その結果、消費者は経済が不安定な時期であっても、美容製品への支出を優先しようとします。

フィナンシャル・ポスト(Financial Post)は、2024年2月に、若い買い物客は 「美容製品を買う理由は常にある 」と感じていると報じました。記事は次のように続いています。

The impulse to dive into a beauty regimen has come from the endless scroll of social media posts showing influencers slathering on Drunk Elephant skincare products, reaching for Dior’s lip oil, and swearing by Sol de Janeiro’s Brazilian Bum Bum cream.

訳)美容に費やしたいという衝動は、インフルエンサーがドランク・エレファントのスキンケア製品を塗って見せたり、ディオールのリップオイルに手を伸ばしたり、ソル・デ・ジャネイロのブラジリアン・バム・バム・クリームを愛用している様子を映した投稿が、ソーシャルメディアを通じて延々と流れていることに起因する。

不況の時代には、人々が使うお金は少なくなりがちです。しかし、ある種のバイラル商品への人気は、顧客が口紅のような小さなアイテムにお金を惜しまないことを示しています。この現象は「リップスティック効果」として知られていますが、この言葉は化粧品ブランド、エスティ ローダー(Estée Lauder)の後継者であるレナード・ローダー(Leonard Lauder)によって生み出された造語です。

さらに、美容の民主化によって、あらゆる製品カテゴリーで手頃な価格の選択肢が広がっています。ドラッグストアの定番商品からインディーズブランドまで、消費者は様々な価格帯における豊富な選択肢を手に入れ、お金をかけずに美容習慣を満喫できるようになりました。この「手頃な価格」という要素は、多くの消費者にとって、特に経済的に苦しい時期の生命線となっています。

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コラム:低価格商品が消費者、ブランド、地域経済にもたらすもの

経済的な不安定さの中、多くの消費者は品質を損なうことなく手頃な価格の製品を求めており、特に美容業界ではコストパフォーマンスに優れた製品が人気です。プチプラコスメや多機能アイテムの利用が増えているのは、賢い選択を目指す消費者の姿勢によります。

さらに、手頃な価格の製品は、エコノミーセグメントだけでなく、ミッドレンジやプレミアムセグメントにも良い影響を与えています。消費者が手頃な価格の製品を試すことで、そのブランドへの信頼感が醸成され、結果として、より高価格の製品を購入する動機付けにもつながります。これにより、全体的なブランドロイヤルティが向上し、長期的な収益性を確保することができます。

また、手頃な価格の製品を提供することは、地域経済にも貢献します。地元の素材や生産技術を活用することで、コストを抑えつつも質の高い製品を生産でき、地域の雇用を促進することが可能です。結果として、地域経済の活性化にも寄与し、経済全体の回復力を高めることができます。

このように、手頃な価格の製品は消費者、ブランド、地域経済にとって重要な役割を果たし、その相乗効果によって、持続可能な経済成長を支えています。

 

美容業界における今後の展望

美容業界は経済の乱気流に直面しながらも驚異的な回復力を発揮してきましたが、課題は依然として残っています。

インフレの圧力、サプライ・チェーンの混乱、消費者の嗜好の変化は、美容ブランドや小売業者にとって引き続き挑戦の種となっています。しかし、進化する消費者ニーズに敏感に反応し、イノベーションと適応力を活用することで、美容業界はこうした難局を乗り切り、かつてないほど力強く立ち上がることができると言われています。

さらに、不確実性の中にも、成長と拡大のチャンスは豊富にあります。消費者が健康とウェルネスを優先するようになるにつれ、クリーンビューティ・ウェルネス製品に対する需要は急増すると予想されます。同様に、デジタル化とeコマースの台頭は、バーチャルな化粧品のカウンセリングサービスからインタラクティブなショッピング体験まで、ブランドや小売業者が消費者と新しい革新的な方法で関わる道を提示しています。

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まとめ

インフレ、生活費の圧迫、マクロ経済の不確実性の中、美容小売の回復力は、セルフケアの永続的な魅力、手頃な価格と入手のしやすさなど、様々な要因の組み合わせによるものです。美容業界は進化を続け、変化する市場力学に適応し、常に激動する経済の中で希望とインスピレーションの光であり続けています。

今後も、数字で示される市場動向を注意深く観察し、変化する消費者のニーズと技術の進化に対応し続けることで、美容業界全体が持続可能な成長を遂げることが期待されます。

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