ケーススタディ

2025年の小売市場を変える新たなトレンドと戦略を探る

小売業界は急速に進化を遂げています。2022年から2024年にかけて見られた消費者行動の変化や市場シフトを背景に、AIやデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が2025年以降のトレンドにも大きく影響を与えると予想されます。

オムニチャネル戦略やパーソナライズされた顧客体験が成功を収める中、小売企業が2025年以降、これらの新しいトレンドにどのように対応し、持続可能な成長を実現するかが鍵となります。

本記事では、2025年のトレンドを予測し、小売市場で成功するための戦略について探っていきます。

 

1. 小売業界における消費動向の変化

2025年の小売市場では、消費者の価値観の多様化が一層進むと予測されています。特にデジタルネイティブ世代の台頭により、即時性や利便性、新しい価値観の反映などが購買行動を左右する重要な要素となっています。

2. 2024年のヒット商品と小売トレンド by日経トレンディ

日経トレンディの発表によると、物価高の影響が続く中、2024年のランキング上位では消費者が「得するかどうか」を重視した商品や、生活を快適にする商品が中心となってヒットしました。

「得ノミクス」の進化

消費者の節約志向が高まり、「お得感」のある商品やサービスが人気を集めました。ポイント還元率が高い「Vポイント」(3位)や、セールが魅力の越境ECサイト「Temu」(9位)などがその成功例です。

「ラク至上主義」の商品

テレワークの見直しによる外出機会の増加や猛暑の影響を背景に、日常生活の負担を軽減する商品が注目されました。「トイレマジックリン こすらずスッキリ泡パック」(16位)や肩こりに効く「高周波治療器 コリコランワイド」(24位)がその代表です。

「新しい価値観」を持つ商品

定番商品に加え、新しい視点を持つ商品が人気を集めました。例として、もっちり食感を重視した「もちっとおいしいスパゲッティ」(13位)や、冷感が売りではない“吸湿速乾”機能を備えた衣類「アセドロン」(14位)などが挙げられます。


こちらの2記事もおすすめ

2024年版 日本の小売業売上ランキング30社! TOP10企業から見るトレンド分析
ベストセラーはどのようにして誕生する? 店舗で実践できる施策もご紹介

参考資料:2024年「ヒット商品ベスト30」 この1年でよく売れたもの大集合|日経トレンディ(株式会社 日経BP)

3. 2022・2023・2024年の小売ビジネスにおけるトレンド分析

2022年: オンラインショッピングの需要拡大とサステナブル消費

新型コロナウィルスのパンデミックが続き、2月にはロシアがウクライナに侵攻するなど、2022年は不穏な幕開けとなったものの、オンラインショッピングの需要は急増しました。

総務省統計局の調査「2022年 家計消費状況調査 結果の概況」によると、2022年に2人以上の世帯あたりのネットショッピング支出金額は前年と比べ約11%増加し、2002年の調査以降、支出額は過去最高となりました。

ロックダウンや外出制限の影響で、食品や日用品、高額商品まで幅広い商品がオンラインで購入されるようになり、EC市場が大きく成長しました。また、エシカル・サステナブルな消費に対する意識が2020年頃から注目され、エコフレンドリーな商品やリサイクル素材を活用した製品が市場の中心になり始めました。

参考資料:
2022年 家計消費状況調査 結果の概況|総務省統計局(PDF P. 5)
令和4年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省(PDF P. 5) *この調査では物販系分野のBtoC-EC市場規模が前年比5.37%増の13兆9,997億円となり、EC化率も9.13%に上昇したと報告されています。
新たな価値を目指して サステナビリティに関する消費者調査2022|PwC Japanグループ

2023年: AI・ARの進化とパーソナライゼーション

2023年は、生成AI(例:ChatGPTや画像生成AI)の普及が急速に進み、さまざまな業界で活用されました。これにより、コンテンツ制作、自動化、パーソナライゼーションなど幅広い分野での利用が進みました。また、AIによる高度な自然言語処理が進化し、ビジネスや教育の現場での活用が急増しました。

AR(拡張現実)も進化を続け、小売業やエンタメ分野で顧客体験を向上させるツールとして注目を集めました。例えば、AR試着や家具の仮想配置(IKEA Place)などが人気を集めました。

2025年以降も、AIによるリアルタイムパーソナライゼーションやAR/VR技術を活用したユーザー体験の提供が、企業の競争力を高める鍵となるでしょう。

参考資料:
2023年に注目すべきUI/UXデザイントレンド7選(執筆:Designlab 翻訳:Asuka Nakajima 編集:齊藤颯人 提供元:UX Planet)|株式会社GIG (GIG inc.)
2025年のインタラクティブUIライブラリ最新動向:AI、AR/VR、パーソナライズでビジネスを加速させる技術とは|Reinforz, Inc (リインフォース株式会社)

2024年: キャッシュレスと自動化のさらなる普及

2024年はキャッシュレス決済の普及が進んだ年でした。特に、新たな金融サービスやポイント制度の拡充、越境ECサイトの成長などがキャッシュレス化を後押ししました。キャッシュレス推進協議会の報告書によると、日本のキャッシュレス決済比率は2023年には39.3%に達しており、2030年には50%に達する可能性があるとされています。

自動化技術も、物流や日常生活で大きく進化しました。例として、無人店舗の増加が挙げられます。また、KDDIはロボットや自動運転車、ドローンを連携・制御して荷物を運ぶ実証実験を公開しました。

The Business Research Companyの「Unmanned Stores Global Market Report 2024(無人店舗の世界市場レポート 2024年)」によると、世界の無人店舗市場は、年平均成長率(CAGR)34.3%で2028年には2805億1,000万米ドルに達すると予測されています。同社によると、この成長の原動力となっているのは、特にeコマースの人気の高まりであり、これが無人店舗の需要を促進していくと考えられています。

参考資料:
キャッシュレス・ロードマップ 2024|一般社団法人キャッシュレス推進協議会(PDF P. 53)
コード決済利用動向調査 2024年8月22日公表|一般社団法人キャッシュレス推進協議会 – PAYMENTS JAPAN
コード決済利用動向調査 2024年3月25日公表|一般社団法人キャッシュレス推進協議会 – PAYMENTS JAPAN
「ギョーザ無人店」急増、3年で10倍 全国1400店舗に増加も、出店ペース鈍化|株式会社帝国データバンク|PR TIMES
KDDI、全自動配送に挑戦 ロボやドローンを協調制御|日本経済新聞
無人店舗の世界市場レポート 2024年|The Business Research Company発行|株式会社グローバルインフォメーション

4. 2025年以降の小売ビジネスにおけるトレンド予測

予測1. AIの進化と精度向上によるDX加速とパーソナライズ化

オンライン小売では、顧客が興味を持つ商品やプロモーションをレコメンドしたり、過去の購買データを元にパーソナライズされたメール配信や通知を送ることが一般化しています。

一方、実店舗でもAIを活用した接客支援ツールが日々進化しており、来店者の購買履歴を元に商品提案を行うなど、サービスの高度化が進んでいます。

このようにAIは顧客の購買データ、ウェブブラウジング履歴、行動パターンなどをリアルタイムで解析し、個別の顧客に最適化された商品提案やマーケティング施策を可能にします。

2025年にはAI技術の進化と精度向上により、小売業界のDXが加速し、顧客体験がさらに発展することが期待されています。

予測2. 実店舗におけるAIカメラの導入がより顕著に

AIカメラは、顧客の入店状況や移動・購買パターン、滞在時間などを分析し、最適な商品配置プロモーション戦略を立てるためのヒントとなるデータを提供します。これにより、店舗はターゲット顧客に対して最適化された買い物体験を提供できるようになり、顧客満足度を大きく向上させることが期待されています。

2022年のAIカメラの市場規模は全世界で3,825万1,300台、2019~2022年の成長率は20.5%で推移しました。今後もAIカメラの導入が進むにつれて、店舗内の顧客の行動をより深く理解し、個別にカスタマイズされたサービスを提供することが可能になっていくでしょう。

関連記事:AIカメラ普及率の現状と将来予測

予測3. デジタル広告の進化とデータ収益化

AIを活用したデジタル広告は、個々に最適化されたターゲティングとリアルタイムのデータ分析を実現します。今後も小売店に訪れた顧客データを収集し、SNSや動画広告の作成、さらには接客改善ディスプレイの企画などにおいても最大限活用できるようになることが予測されます。

また、小売業界におけるデータ収益化も注目されるでしょう。データ収益化とは、顧客の購買行動や属性情報などの膨大なデータを分析し、それらを活かしてマーケティングの最適化につなげたり、新たな収益源の発見を目指す取り組みです。現在、リテールメディアネットワーク(RMN)が注目されており、これは小売業者が実店舗で取得した顧客データを活用し、ブランドやメーカーなどに自社の広告枠を販売することで収益を得る仕組みです。

関連記事:【RetailNext共同記事】今日の小売業界におけるデータ収益化とは?

※これらの予測は筆者独自の見解、編集等に基づくものであり、様々な要因によって変化する可能性があります。

まとめ:2025年の小売市場を変える新たなトレンドと戦略を探る

2025年、日本を含む世界の小売業界はさらなる変革を迎えるでしょう。2022年から2024年にかけて明らかになったトレンドを基に、AIやデジタル技術を活用した革新的な戦略を構築することが、企業の成長の鍵となります。消費者の期待を超える体験を提供することで、ブランド価値を高め、持続可能な店舗経営を実現しましょう。


サービス導入のご相談・ご質問はこちら!

小売店をはじめ800店舗以上の支援実績を持つGROOOVEは、国内外で店舗を持つブランドに対し、店舗がDXで達成したい目的に応じたソリューションを提供することでオペレーション改善を支援しています。
オフライン店舗のパフォーマンス向上・利益アップにつながるお手伝いをいたします。
是非、お気軽にお問い合わせください。

人気の記事
特集記事
  1. 2025年の小売市場を変える新たなトレンドと戦略を探る

  2. 2024年版 日本の小売業売上ランキング30社! TOP10企業から見るトレンド分析

  3. AIカメラによるイベント来場者の動向把握と集客施策

  4. コンビニエンスストアのデータ分析

  5. 接客パフォーマンスの評価基準と店舗での測定方法

  6. ビジネスモデル「リテールテイメント」とは?

  7. 店舗分析ツール「入店人数計測システム」とは? 主な“3種類”をご紹介!

  1. 2025年最新! 防犯カメラ設置のための補助金・助成金を利用しよう

  2. 【RetailNext共同記事】生成AIが実店舗小売に与える影響

  3. 【RetailNext共同記事】美容小売業、消費低迷にもかかわらず底堅さを維持

  4. 【RetailNext共同記事】今日の小売業界におけるデータ収益化とは?

  5. マーケティング戦略について考える

  6. 美術館・博物館などの施設におけるデータ分析・活用方法

  7. AIカメラを利用した接客分析のコツ

お問い合わせ

 

当社製品・サービスをご希望のお客様はこちらからお問合せください。

TOP