ケーススタディ

スーパーマーケットの売上ランキングと業界における今後の取り組み【2025年最新版】

日本のスーパーマーケット業界は、日々の暮らしを支える食品供給の場として、安定した需要を維持しています。2023年から2024年にかけては、消費者の購買行動が大きく変化し、スーパーの売上ランキングを左右する要因も複雑化しています。そんな中で、2025年の売上ランキングの上位に入ったスーパーはどのような戦略で勝ち抜いているのでしょうか?

本記事では、最新のスーパーマーケットの売上ランキングをもとに、業界の現状や新たな取り組み、そして売上アップに貢献すると期待されるデータ取得システムの1つ「AIカメラ」による現場の見える化まで、包括的にご紹介します。

スーパーマーケットの店舗入口に並ぶ生成食品

 

1. 業界全体の現状と売上ランキングに与える成長背景

日本のスーパーマーケット業界は、少子高齢化などの社会的背景を抱えながらも、生活に欠かせない食品を中心に安定した需要を維持してきました。近年のスーパーマーケット業界のトレンドとして、共働き世帯や単身高齢者人口の増加により「お弁当・お惣菜需要」の高まりを挙げることができます。価格競争が激しい加工食品に比べ、総菜は収益性が高く、コンビニエンスストアと競い合う商品としても、安定した生産体制を確立し、各社は関連商品の充実に力を入れています。

参考資料:

  1. スーパーマーケット業界の動向およびM&Aについて【2025年版】|三井住友トラストグループ
  2. 【2025年最新】スーパー業界の将来性について|TOP|note
  3. 総菜、スーパーが増産 共働き・高齢者向け需要増 いなげや、初の加工拠点 オークワ、9年ぶり工場|日本経済新聞


スーパーマーケットの店内|客が食品コーナーを行き来する様子

 

2022〜2023年の全国のスーパー市場動向

2022~2023年は、経済活動の再開による外出機会の増加や、コロナ禍の巣籠もりが終わったことによる「内食需要の反動減」を背景に、スーパーマーケット業界全体は横ばいで推移しました。また、価格高騰による生活防衛意識の高まりからNB(ナショナル・ブランド)の販売点数が伸び悩む中、PB(プライベート・ブランド)商品の売上が伸びました。

スーパーマーケット業界の市場動向(スーパーの販売額推移:2013年〜2023年)|三井住友トラストグループ

スーパーマーケットの販売額推移(2013年〜2023年)出典:スーパーマーケット業界の市場動向|三井住友トラストグループ

また、都市部と地方部の市場動向にも違いが見られます。

都市部では、競争が激化する中、利便性を重視した小型店舗や宅配サービスが強化されています。一方、地方では消費者の高齢化に伴い、店舗へのアクセスが容易な移動販売車や地域の特産品を扱う店舗が増加しています。こうした地域特性に合わせた戦略が、市場規模を維持し、さらには拡大させるカギとなっています。

参考資料:スーパーマーケット業界の動向およびM&Aについて【2025年版】|三井住友トラストグループ

スーパーマーケットの食品売り場

 

 

2. 業界再編と“選ばれる店舗”づくり:主な取り組み例

現在、消費者層の変化による各需要に対応するため、スーパーは商品構成や売り場づくりを見直し、従来の量販型から顧客ニーズを重視した小規模商品や高付加価値のある商品へのシフト、業界全体の再編やサービス向上への取り組みなどを積極的に進めています。

  1. PB商品の強化コストを抑えた自社ブランド商品で、低価格で高品質の商品を提供することによる競合他社との差別化とブランディング強化。(例:イオンの「トップバリュ」、セブン&アイグループの「セブンプレミアム」など)
  2. デジタル化の推進:業界全体でデジタル化AI活用といった革新にも積極的に取り組んでいます。(例:セルフレジやスマホアプリ決済による利便性の強化、AIカメラの導入で業務効率化と顧客満足度向上を図る など)
  3. M&Aの活発化:大手は地方展開のため買収を進め、中小は大手傘下で安定を図ります。また、大手の動きに対抗して中小企業同士が提携する動きもあり、業界再編が進行中です。

↓スーパー業界のM&A(2019~2023年の例)

参考資料:

  1. スーパーマーケット業界の動向およびM&Aについて【2025年版】|三井住友トラストグループ
  2. スーパーマーケット売上ランキング!スーパー業界の動向や大手の年収を解説【2025年】|スーパー業界の動向|キャリハイ転職(株式会社コレックホールディングス)


 

 

3. 日本のスーパーマーケット業界売上ランキングTOP10

以下は、2025年における日本のスーパーマーケット業界の売上高トップ10企業をランキング形式で抽出したものです。日本のスーパーマーケット売上高ランキングにおいて、1位から10位にランクインした企業は、業界のリーダーとしてその存在感を示しています。

なお、本データは、バフェット・コード社が提供する全国の小売業売上ランキングを参考に、スーパーマーケット業界に関連する各企業の最新の売上データ(直近の決算情報に基づく)をもとに作成しています。

*表の数値は、2025年4月21日(月)時点の情報に基づいています。また、ランキングデータから以下の基準で順に企業を抽出しています。

  1. 食品スーパー主体の企業
  2. 総合小売業であっても、明確にスーパーマーケットチェーンを展開している企業(例:セブン&アイHDのイトーヨーカドー、イオンのイオン・マックスバリュなど)
  3. ドラッグストアが主力であっても、食品スーパー事業の比重が大きい企業(参考値として含む場合あり)
順位 会社名 売上高
(単位:百万円)
営業利益
(単位:百万円)
当期純利益
(単位:百万円)
営業利益率 純利益率
1位

セブン&アイHD

11,972,762

420,991 173,068 3.5% 1.4%
2位

イオン

10,134,877 237,747 28,783 2.3% 0.3%
3位 ライフコーポレーション

850,496

25,270 17,948 3.0% 2.1%
4位 ユナイテッド・スーパーマーケットHD

811,273

5,978 810 0.7% 0.1%
5位

フジ

808,928

12,953 3,818 1.6% 0.5%
6位

バローHD

807,795

22,844 11,945 2.8% 1.5%
7位

トライアルHD

717,948

19,161 11,439 2.7% 1.6%
8位

アークス

608,284

15,936

11,063

2.6%

1.8%
9位

ヤオコー

595,348

29,328 18,243 4.9% 3.1%
10位

イオン九州

531,619

10,537 6,035 2.0% 1.1%

参照: 小売業業界 売上高ランキング(企業一覧)|バフェット・コード株式会社

 

 

4. 商品カテゴリー別で見る売上ランキング(構成比):2022・2023・2024年比較

2022〜2024年におけるスーパーの売上構成比が最も高いカテゴリーを見ると、順に一般食品、日配品、青果となっています。2024年には、売上高順に一般食品が24.3%、日配品が19.0%、青果が15.8%の構成となっています。

※回答企業全体・売場面積別、都市区分×売場面積別の集計結果などの詳細は、こちらからダウンロードしてご確認ください。
2024年 スーパーマーケット年次統計調査 報告書|一般社団法人全国スーパーマーケット協会・一般社団法人日本スーパーマーケット協会・オール日本スーパーマーケット協会(PDF P.136参照)

 

 

5. AIカメラによる“見える化”と食品売り場の改善

2025年以降も、業界内でのM&Aや店舗統廃合といった再編がさらに進み、「地域密着型」「DX推進型」など、それぞれの強みによる差別化が顕著になっていくことが見込まれます。消費者ニーズの変化に柔軟に対応できる企業が、今後の売上ランキングで上位に食い込んでくる可能性が高いでしょう。

また、各社の売上や業績には「商品開発力」だけでなく、「物流」や「在庫管理」といった業務オペレーションの効率化が直結する時代に突入しているとも言えます。

市場の成長余地が限られる中、各社は自店舗が「選ばれる理由」をつくるための改革として、たとえばAIカメラで取得するデータを活用した顧客体験の改善に、本腰を入れ始めています。

AIカメラを使えば、「来店者が棚の前で何秒立ち止まり、どれだけ商品に興味を示したか」など、店舗でのリアルな顧客行動を数値化できるため、棚割り・導線設計・人員配置などにおいて、より実効性のある改善が可能になります。

AIカメラで食品売り場の顧客行動や人流を可視化

AIカメラで食品売り場の顧客行動や人流を可視化

 

 
 

6. 実店舗におけるAIカメラなどを用いたデータ活用事例

AIカメラを活用した広告効果測定システムをコンビニへ導入

ソニーグループは、AIカメラを活用した広告効果測定システムをセブンイレブンの国内500店舗に導入しました。AI搭載カメラを店内の電子看板周辺に設置し、客の顔や頭の向きから広告の閲覧人数や時間を把握。購買データと組み合わせることで、消費者行動における精度の高い分析を可能にしています。

カメラにはソニー製のイメージセンサーを搭載し、撮影〜データ処理をカメラ内で完結させる「エッジAI」技術を使用。通信データ量の軽減や個人情報保護にも配慮されています。

この技術は、小売業界で進んでいる、コンビニスーパー、ドラッグストアなどの店舗を広告媒体として活用する「リテールメディア」戦略を支援するものでもあります。

セブンイレブンは、このシステムの導入により、広告視聴者層やその後の購買行動が可視化できるようになったことを高く評価しています。

参考資料:ソニーG、セブン500店にAIカメラ 消費者の行動分析|日本経済新聞社

 

賞味期限管理システムで食の安心・安全性と業務効率をアップ × AIカメラによる店舗分析

コープおきなわは、賞味期限管理の効率化を目的に、OCR機能付きのハンディ端末を導入し、月135時間の業務時間削減とヒューマンエラーの大幅な減少を実現しました。

システム導入後は、データの抽出・分析が簡単かつ迅速になり、本部のメンバーも週3時間の業務削減により、企画業務に集中できるようになりました。その好影響は全店舗に波及し、意思決定の基準が人間の経験や勘からデータへと移行し、新たな企業文化が形成されつつあると感じているとのこと。

また、惣菜部門では100以上のレシピをデータ化し、惣菜コーナーに設置したAIカメラ客数と売上の関係に対する調査を開始しました。導線分析をもとに、ニーズが集中する時間帯に合わせたシフト調整や原材料の小ロット化も進めていく考えです。

参考資料:賞味期限管理システム化で 食の安心・安全と効率アップを両立【生活協同組合コープおきなわ】|ResorTech Okinawa

データをもとに商品在庫を補充し、最適化する店員
 

 

7. まとめ:生き残るのは「選ばれるスーパー」。テクノロジー×現場力が生き残りの鍵

スーパーマーケット業界は、今後さらに「テクノロジー×現場力」の融合が進むと考えられます。単なる「値下げ合戦」ではなく、いかに顧客体験を向上させるかが、業界の未来を左右するカギとも言えます。AIカメラによる現場の可視化や、アプリを使ったパーソナライズド・クーポンの配信などが進み、販売戦略の高度化が求められていくでしょう。

また、少子高齢化が進む日本では、買い物困難者への対応も重要な社会課題となっています。移動販売やオンライン宅配など、既存の店舗の運営に加えて、新たなチャネルの開発が不可欠となります。

その中で、AIカメラは現場力を底上げする、食品業界の標準テクノロジーになるとして期待されています。全国で導入が進む中、データをどう活用し、どう改善につなげるかが企業の成長に影響をもたらすと考えられます。

今後はこれまで以上に「顧客視点」に立った改革が求められます。2025年以降も、変化に柔軟に対応し、地道な商品力と業務力を備えた企業が生き残っていくでしょう。

※これらの予測は筆者独自の見解、編集等に基づくものであり、様々な要因によって変化する可能性があります。

 

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